第9章 back again〜SNJ〜
「痛む心もねーだろ、もうどうでもいい相手から何を言われたって」
「そ、れは…」
「二宮を選んだって言うなら、中途半端に他の奴に優しくすんな。いい人になろうとすんな。特に、俺なんかには、な」
そう言って目を瞑った翔君だったけど、次に目を開けた時にはいつもの櫻井翔の顔があった。
「まっ、俺が恋しくなったらいつでも帰ってこい。別に俺も他の男のもんになったお前でも気にしねーから。逆バージョンもいいんじゃね?ニノと付き合いながら、俺ともヤっとくか」
「…結構です」
結局…
翔君にとって俺はおもちゃでしかなくて…そこに心を求めた俺が馬鹿だったんだ。
それでもどこかで、翔君にも想いがあったんだって…そう思いたくて…
「バカだよね…想いが無いって気付いていたのに…ずっと好きだったんだから」
涙が溢れてくるのは、悔しいから。
そんな馬鹿な自分ムカつくからであって、悲しいからじゃ、ない。
「俺はバカだけど、だからってずっと自分に心がない人を好きでい続けられる程には、バカでいられないんだ。そう、俺も、もう心なんて、ない。しょーくんなんて、知らない!もうプライベートでは俺に話しかけないで」
「それでいいんじゃね。お前の心がニノのもんなら、元彼…元セフレか?とは、距離をおくべきだろ」
「い、いよ。別に元々仲がいいわけじゃないんだし。好きなだけ距離置いてよ」
「俺が、じゃなくて、お前にそれが必要なんだろ」
冷たく言い放った癖に、目の奥が揺れている気がしてその目を覗き込もうとした瞬間…
「まっ、もう、どうでもいいけどな」
翔君は興味なさげに、あっさりそう吐き捨てた。
揺れた様に見えた目の奥にも、俺への未練なんて見えなくて。
本当に、自分の存在なんてどうでも良かったんだと思い知らされ…
悔しくて…
悲しくて…
でも、もう何がそんなに悔しいか、悲しいかも、分からなくて。
もう言葉は返さず、スマホを手に取り
これ以上話すつもりはない
と意思表示した。
そんな俺を翔君は暫く見つめた後、肩を竦めて元いた場所に戻って新聞を手にした。
ゆっくり捲られる新聞の音が、その冷静さを表している様で…
奥にある畳の上に横になって、ギュッと目を瞑って涙を堪える。