第9章 back again〜SNJ〜
「む、りだよ、しょーくんには。俺だけじゃ満足できないから、いつも俺じゃない誰かを求めていたんでしょ」
「でも、そんな俺でも、お前は許して…俺の帰る場所になってくれてたじゃねーか」
「だから…もう、そんな都合のいい存在は嫌なんだ、って!」
まるで駄々っ子を相手にしている様なやり取り。
てか、俺はいつも翔君を待っておけ、とか…
どんだけ都合のいい存在なんだよ。
「俺がお前だけを大切にしたら、帰ってきてくれるか?」
「無理だって、しょーくん」
俺はもう、ニノを選んだんだ。
「もう、遅いよ…」
ずっと、翔君の一番になりたかった。
お前がいればいい
って言われたかった。
でも
今度こそ
って期待する度に…俺から離れていったのは、翔君でしょ。
それを今更そんな風に言われたって…
「逃がした魚は大きいって言うでしょ。人のものになったから惜しく感じるだけで、もし俺が戻ったとしても…一緒だよ」
俯いたまま顔を上げない翔君の姿に胸が苦しくなる。
でも…駄目だ。
ここで揺れたら…俺は本当に最低の人間になってしまう。
俺は…ニノを愛するって、決めたんだから。
「ごめん、しょーくん…でも」
「ぷっ…はははっ」
何とか翔君に分かってもらおうと言葉を続けた俺に、ずっと真顔だった翔君が突然吹き出した。
「しょーくん……?」
「悪りぃ、悪りぃ、悪戯が過ぎたわ。お前が言う通り、俺が誰かひとりで満足できるわけ、ねーし?お前が言う通り、俺のもんだったはずのお前がニノのもんになるとか、ちょっと気分よくなくてさ。からかっただけだから、マジに取るなって」
笑ってそう言った翔君が、俺の肩に置いた手を振り払う。
いつもそうだ。
真剣なのは、俺だけ。
結局、そうやって翔君は俺となんか向き合う気はないんだ。
「そうやって…相手を傷付けて、楽しいの?俺には、心なんてないって思ってんの?」
「お前の心は、ニノにあんだろ」
怒りが溢れて、どうしようもなくてそう言った俺に、翔君は笑うでもなく、怒るでもなく、感情の感じられない声でそう言った。