第9章 back again〜SNJ〜
「ニノとうまくいった?」
今日は撮影が早く終わったから、早く入って楽屋でゆっくりしようときてみたら、既に先に来ている人がいて…
翔君と二人っきりの楽屋。
そして、俺はスマホを弄り、翔君は新聞を読みながら時々メモを取ったりしている、あの時と同じ状況でかけられた言葉。
「お前が答えないなら、ニノに聞こうか?潤の締まり具合は最高だろ、って」
「やめてよ」
「もしかしてお前がニノ抱いてるとか?いや、まさかなぁ。あんだけ中攻められんのが好きなお前が、挿れるだけで我慢できるとは思えねーし」
無視を決め込んだ俺に、楽しそうに笑って新聞を置いた翔君は立ち上がって俺に近付いてきた。
「そんなにニノは上手かったのか」
「そんなんじゃ、ないから」
「へぇ、下手なんだ」
「だから!」
引こうとしない翔君に苛立って顔を上げた瞬間、顎を掴まれた。
「なぁ…俺は、そんなに下手だったか?」
「だ、から…上手いとか下手とか、そういう話じゃないでしょ」
さっきまでと同じ様に、面白半分で聞かれたらキレてやろうと思ったのに…
俺の顎を掴んだ手は少し震えていて、俺を見る翔君の目は捨てられた子犬みたいな色をしていて…
「なら、何で俺んとこ、帰ってこないんだよ」
「しょーくんは…俺がいなくても平気でしょ。それでも…しょーくんに愛が無くても平気だって思っていたけど…でもやっぱり、俺も愛されたいんだ。そして…ニノは俺にそんな幸せをくれた。愛し愛される幸せを知ったら…もう、しょーくんには、戻れないよ」
「じゃあ…俺がお前を愛したら、お前は帰ってきてくれんのか?」
俺が知っている翔君は、いつも自信満々で…
なのに、今俺の目の前にいる翔君は、迷子になった子どもみたいに今にも泣き出しそうな顔をしていて…
やめてよ。
いつもみたいに、傲慢な顔して
俺んとこ戻ってこいよ
って言ってよ。
そんな…らしくない顔、しないでよ。
俺は、ニノを選んだんだ。
ニノと幸せになるって、決めたんだ。
だから…今更そんな…心を揺らさないでよ。
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