第8章 声を聴かせて〜NJ〜 3
ピンポーン
ニノのマンションの下。
いつもなら…
(潤くん入って!)
っていうニノの明るい声とともに開くドアはピクリともせず、インターフォンの向こうからも、応答ない。
でも、マネージャーにマンションまで送った事は、確認した。
きっと…
見てるよね?
モニター越しに、今何を思ってる?
プツッ
と音声が繋がる音がした。
でも、その向こうからはやっぱり音はしなくて…
「誰か来たら…不審に思われちゃうね。二宮和也のマンションの下で松本潤待ちぼうけ、って記事が目に浮かぶ」
笑ってそう言っても、インターフォンからは反応はない。
「ねぇ、寒いよ……お願いカズ…開けて?」
寒いのは…心。
今までどれだけ無自覚にニノに甘えていたのか、ここ数日で、痛い程実感した。
そして、どれだけ自分にニノが必要か。
そんなの…
結局自分の我儘だって分かっているけど…でも、俺に必要なのは翔君だと思っているニノに距離を置かれるのは、嫌だ。
ニノがもう俺といるのは嫌だと思うにしても、それはちゃんと自分の想いを告げてからにしたい。
それもまた、自分の我儘だけど…
ニノはモニターの向こうで聞いていると信じて待っていると、ニノの躊躇を表すかのように暫く沈黙があった後、ドアが音もなく開いた。
「…どうぞ」
「お邪魔します」
今まで何度も訪れた事のある部屋だけど、こんなに緊張したのは初めてで…
こんなに、というか、初めて来た時ですら緊張はしなかったから、緊張する事自体が、初めてで。
でも…
「今日は無理だって言ったよね」
そう言いながらも、俺の為に温かいお茶をいれようとしてくれているニノを見て、心が温かくなって…
そんな緊張も溶けていく。
そう…
ニノはいつだってそうやって、意識せずに俺の心を柔らかく溶かしてくれてたんだ。
あまりにも当たり前で、そして俺がバカだったから、気付かなかっただけで…
「話を、聞いて欲しいんだ」
俺の前にお茶を置いた後、俺の横ではなくソファーを背もたれにしてラグに座った。
そんな動作も俺を拒否している意思の表れな気がして…
それでも折れそうになる心を必死で奮い立たせる。