第8章 声を聴かせて〜NJ〜 3
「あんた、やっぱりニノを狙ってんの?」
「まつじゅんだって、振り向いてくれない翔くんからニノに流されたじゃん。だから、それと同じ事がニノにも言えるんじゃね?弱った心にはつけ込みやすいのよ」
「智くんも悪いよね〜俺を潤にけしかけるのは、自分がニノを手に入れるためかよ」
「欲しいものを手に入れるには、手段は選んでらんないよね」
まるで、それら全てがゲームの様に語る大野さんと翔君の会話に、自分の中で何かがキレる音が聞こえた。
「大野さんが何をしても、しょーくんが何をしても、関係ない。俺の気持ちは…もう決まってるから」
「じゃあ…早くそれがニノちゃんに届くといいね…」
今まで黙っていた相葉さんの声が突然聞こえて…
その声色に、熱くなっていた俺の心が一気に冷静になる。
「あんな辛そうなニノちゃん…見てたくないから。きっと…あの子、食べてないし、寝てないよ。ゲームに夢中だから、って言ってるけど…ゲームに夢中だからじゃなくて、眠れないから、ゲームに夢中になっているフリをしてるんだって、思う」
「相葉さん…」
「ねぇ、松潤。ニノちゃんが、本当はとてもさみしがり屋で臆病なの、知ってるでしょ?だから…一度折れてしまった心は、なかなか素直に戻れない。強引でもいいから、無理やりでもいいから、早くあの心に飛び込んで来てよ。もうこれ以上…あんなニノちゃん見たくない」
泣きそうな顔でそう言う相葉さんは、本当にニノの事を心配していて…
でも俺は、この期に及んで、ニノに本気でぶつかって傷付くのを恐れて…ニノの背中を追う事が出来なかった。
「ごめん、相葉くん。ちゃんと…行ってくるから」
そう言った俺に、それぞれからそれぞれの返事が返ってくる。
「うん…ニノちゃんのあのアイドルスマイル、ぶっ壊して、本当の笑顔を取り戻してきて」
「玉砕したら、俺んとこ戻ってこい」
「玉砕したら、カズの事は俺に任せろ」
後の二人の言葉は無視して、相葉君に頷いて、俺は楽屋を飛び出した。
ニノ…
お前のための何ができるか分からないから、とか…色々理由つけて、ビビって、逃げて…ごめん。
ニノがどんな答えを出していようと…
もう逃げないから。
だからお願い。
一度だけ…俺に、チャンスを頂戴?