第7章 I miss you〜SJ〜 4
「しょーくん…好き…」
見開かれた目の端に、誓う様に唇を押し当てる。
この気持ちに、嘘はない。
どうしたって、翔君が好きで…大好きで…
でも…
俺がニノに抱かれていた、っていうのも…消し様のない、事実。
「でもごめん…俺…ね、ニノに、抱かれた」
俺がそう言った瞬間、ギュッと強く瞑られた目。
でもまた直ぐに開いて、俺を真っ直ぐに見つめてきた。
「ニノは…俺なんかよりずっと、優しくお前を包んでくれただろうから…お前がニノに惹かれたのは、仕方ない」
「それは…」
否定しようにも、ニノは翔君が言う通り、俺の事を本当に大切にしてくれた。
俺が不安がらないように…
寂しさに襲われないように…
いつも…いつも…
ここで、それを違うっていうのは、俺を大切にしてくれていたニノを…
ニノの想いを、否定する事になるから…だから、できない。
「ニノは…見てたから、って。ずっと、見てたから、どうすればいいかなんて簡単だったんだ、って…言ってた。だから、自分は狡いんだ、って…」
俺の言葉に、翔君は苦笑して視線を天井に移した。
「お前に対する俺の態度にムカついてただろうな。自分なら、もっと上手に愛せるのに、ってさ」
自嘲する様に笑った後、翔君はまた派手に咳き込んだ。
慌てて水を飲ませて、その背中を摩る。
ちゃんと翔君が全快したら、って思っていたのに、何で言っちゃったんだろう。
「ごめん、熱も完全に下がってないのに、こんな長話。まだ時間はあるから、もうちょっと、寝よ?」
「いや…ここで寝たって、いい夢見れねーし」
「でも」
「お前は、今でも俺の事、好き?」
止めようとした俺の言葉を遮って、翔君の真剣な目が俺を捉えた。
「うん……ずっとずっと…もう諦めなきゃって思いながら…あの時から何も変わらず、好きだった」
「……そっか…」
翔君の体に入っていた力が抜けるのと同時に、その目がゆっくり瞑られた。
「あの時の事、何度も何度も、後悔した。でも…しょーくんから決定的に振られるのが怖くて…ごめん、なさい…」
そう言いながらも、自分の勝手な言い草に泣きたくなるけど…
でも、ここで泣く権利は、俺には、ない。
だってこれは、全部俺の幼さが招いた事だから。