第7章 I miss you〜SJ〜 4
「ゴホッゴホッゴホッ」
咳き込む音に、ハッと顔を上げる。
ここは…そう…翔君の、家、で…
今まで見ていた夢に、一瞬状況が分からず、ベッドに横たわっている翔君を見て、今に引きこどされた。
翔君が寝てから、何度もその汗を拭って…水を飲ませて…
落ち着いてきた呼吸に安心して…いつの間にか、俺も寝てたんだ。
「お水、飲もっか」
薄っすら目を開けている翔君に、そう問いかけて口元にストローを差し出すと、素直にそれを吸い上げて…
昨日の様に、俺の事をジッと見つめる。
「しんどいの、マシになった?」
飲み終わった後も、あまりにジッと見てくるから、その視線の耐えきれずにそう問いかけてみた。
「熱は…まだ少しあるけど、だいぶ下がったね。よかった」
「夢じゃ…なかったんだ」
「ん?あぁ…ふふっ…ごめん、勝手に入って」
昨日の翔君とのやり取りを思い出して笑いながらそう言うと、翔君の目も緩んだ。
そして…
「おかえり」
「……え?」
「そう、言いたかった」
そう言った翔君の目に、涙が溢れた。
「弱ってる時に…駄目だな、お前の顔、見ると。かっこ、わりぃ」
溢れた涙を手のひらで覆って、そう言う翔君は…
でも、格好悪くなんて、全然なくて。
「あの日…お前を捕まえられなくて…でも、もう一度お前に手を伸ばすのが怖くて…手を伸ばしても、お前を幸せにできる自信もなくて…ずっと…ずっと、後悔してた。だから、お前がこの家にまた帰ってきてくれたら…そう言おうと…」
「しょぉ…くん…」
「お前が…ニノの隣でなら、幸せに笑えるなら、その方がいいんだ。俺が、あんな未練がましい事したから…こんなとこまでお前を来させて、ごめん」
翔君の言葉に、俺も溢れる涙を止める事ができなかった。
さっき、翔君の着替えを探した時、雑多に詰め込まれている服の中に、ひとつだけ綺麗にその場所を確保してしまわれているものが、あった。
それは…
俺がいつも、翔君の家で着ていた部屋着。
まるでそこで持ち主を待っている様に…
何かの願掛けの様に、綺麗に仕舞われたそれを見て、翔君の想いが伝わってきた。
「しょーくん…ただいま」
俺の言葉に、その目を覆っていた手を外した翔君に微笑みかけると、涙に濡れたその目へと口付けた。