第5章 I miss you〜SJ〜 2
「ごめんね…潤くん。でも俺も、あなたが好きなんだ。あんな風に…翔さんを好きでもいいから、なんて言って、まるで遊びみたいに誘って始めたけど…あの時も、いつも…本気だった、あなたが大好きだった。都合のいい男になりきれなくて…潤くんが手に入るんじゃないかって思って…邪魔して、ごめん」
「ニノ…」
顔を上げて俺を見た今にも泣き出しそうなその顔を見た時、フラッシュバックの様に、思い出した。
昨日も見た表情で、そのどこかで見たと思った表情は…
あの頃の俺、だったんだ。
翔君の心が分からなくて…
自分は一番じゃないんじゃないかって不安で…
ひとりでグルグルして…ひとりで考えて…
それでも側にいたいんだ、って不安を隠して笑ってた…
そんなあの頃鏡に映った俺は、こんな顔をしていた。
「ニノ…ごめん…」
あまりにその側が心地よくて、ニノの気持ちを受け入れはしない癖に、その優しさに甘えてた。
ニノが時々見せる表情を、知っていたはずなのに。
過去の自分を思い出せば、分かったはずなのに、分からないフリをして…
ただただ自分を守るために、甘えた。
「謝らないで?本当は…ね、触れもせずに諦めるつもりだったから。でも、手が届きそうとか…俺なら幸せに出来るのに、とか、欲が出ちゃうとダメだね。潤くんは…翔さんじゃないとダメだって、分かってたのに」
「ニノ、本当にごめっ」
結局詫びる言葉しか出なくて、またごめん、と言おうとして…
その言葉を唇で塞がれた。
官能を追うものではなく、ただ合わせられただけの唇に涙の味が混ざる。
「お願い…謝られると、俺の想い出は、謝られなきゃならないもの、になっちゃう。潤くんとの時間は…どれも、俺にとっては、大切なものだから…だからお願い、謝らないで。俺の想い出を、可哀想なものに、しないで」
「ニノ……カズ…ありがとう…」
ニノの事を好きだって言ったのも、嘘じゃない。
じゃなかったら…
たとえ翔君を忘れる為であっても、翔君以外の誰かにこの体を許す事は、出来なかったから。
けど、今それを言ったって…俺がニノを選べるわけじゃない、
だって、その
好き
のレベルが違うって事に、もう気付いてしまったから。