第5章 I miss you〜SJ〜 2
これだけ辛そうにしているニノを前にしても、俺の頭に浮かぶのは
部屋で寝込んでいるかもしれない翔君の姿
なんだ。
それが…答え。
頭で考えても分からなかったのに、こんなにもあっさりと、誤魔化しようもないぐらい、俺は翔君を選んでしまうんだ。
「潤くんが、翔さんとこに飛んで行きたいって思ってる事はとっくに気付いてたのに、足掻いちゃって、意地悪しちゃって、ごめん」
もう涙はないその顔でそう言ったニノは、相変わらず俺の考えている事など全てお見通しで…
「翔さんはもう病院から帰ってきて、家で寝てるんじゃない?翔さんが鍵を持ってたって事は…潤くんも持ってるんでしょ?」
「うん…」
ニノの言う通り、翔君とお揃いのキーホルダーの付いた鍵は、お守りの様に、いつも俺の鞄に入っている。
「行っておいでよ。今日はね、悔しいから送ってあげないけど。これが最後の意地悪だよ」
そう言って笑って、ニノは俺の体をクルリとひっくり返して、ドアから押し出した。
「万が一ダメだったら、今度こそ、正々堂々とアタックしてあげるから。だから…ね、勇気出して行っといで。もう…逃げちゃダメだよ」
「うん…本当に、ありがとう」
俺の言葉にニコッと笑っただけで言葉は返さず、そのまま色々断ち切る様に俺の目の前でドアが閉まった。
乱暴にすら見えるその行動に、でもそのぐらいしないと俺が動けないだろうって思ったニノの優しさを感じた。
こんな酷い事をしたのに、やっぱり最後までニノは俺に優しくて…
こんなにも優しく俺を愛してくれているのに、なのにどうしてニノを選べないんだろう、って気持ちに襲われそうになる。
でも…そう思う事自体が、ニノには失礼な事だし…
自分の想いも、大切にしていないって事になるから。
翔君の気持ちが分からなくて、その想いを試すために勝手に関係を断ち切って…
そんな俺を追わない翔君にやっぱりそこに愛はなかったんだと勝手に絶望して…
あの時の様な事は、もう二度と繰り返さない為にも、俺はもっと強くならなきゃいけないんだ。
だから…