第5章 I miss you〜SJ〜 2
「んっ」
ニノの家に着いた瞬間、玄関でニノにキスを奪われ、そのまま壁に押さえ付けられ、途中で買い物して来た袋が派手な音を立てて下に落ちた。
卵を買ってなくて良かった。
なんて関係ない事を気にしている間に、ニノのキスはどんどん深くなっていく。
「潤くん…ここで、しよっか」
「に、の…ダメだ、って…」
「やっぱり、ここは、いや?じゃあ、ベッドに…」
「じゃなくて」
自分の心も決まらない状態でこれ以上ニノに抱かれるのは嫌だから。
いや…
そもそも、翔君を忘れるために他の誰かを代替にした事が間違っていた訳で。
そんな俺の弱さが導いたこの状況に、俺に文句を言う資格なんて、本当はなくて…
既に体の関係になっていて、家に誘われて付いてきているのに
体はダメ
って言うなんて、普通に考えても
どんだけ身勝手なんだよ
って…思う。
でも…
「ニノが眠れるように側にはいたいけど…でもごめん…やっぱり体は、無理」
「翔さんへの操だて?」
「え?」
フッと笑って玄関にドサっと座ったニノ。
「や、めてよ、ニノ」
「こんな、だったもんね」
「ニノ!」
ニノは昨日の翔君を再現するように、膝の間に埋めていた顔をゆっくり上げた。
「ただ鍵を返しに来ただけの人が、嫌いになった奴の家の玄関でこんな格好、して待たないもんね。もしかしたら、しょーくんもまだ俺を好きなんじゃないか、とか思ったら…もう他の男になんかに抱かれてる場合じゃない、そりゃそうだ」
「そんなんじゃない」
「そんなんじゃ、ない?」
真剣な目で真っ直ぐに聞かれて…
もう一度ニノの言葉を否定する言葉は、出てこなかった。
だって…結局、ニノの言う通り、だから。
「……分かってたよ。今日の潤くん見てたら、翔さんが心配で堪らないって顔してて…ちゃんと隠してたけど、全部、俺には見えてた」
呼吸が荒くなってきた…
目も潤んできた…
熱が上がってきたんじゃないか。
咳が出てきた…
呼吸も苦しそう…
かなりしんどいんじゃないか。
そんな様子の翔さんを心配してる潤君の目は、切なそうに揺れてた。
ニノは俺の状況をそう言って再現してから少し笑って…
立ち上がると俺の首に腕を回した。