第5章 I miss you〜SJ〜 2
「潤くん、お水はそこにあるし、とりあえず薬だけ取ってきてあげなよ」
「…うん…」
でも、用意してあるのは冷えた水とか炭酸だから、常温の水の方がいいと思うし…
鞄を置いている部屋に戻って、迷ったけど、今日家から持ってきた水素水と薬を手にしてミーティングルームに戻った。
「翔さん、持ってきたけど飲める?空腹でも大丈夫なタイプだし…」
「……ありがと」
「あと…お水は、冷たいのは、はあんま良くないと思うから…これ…」
蓋を開けて差し出した俺のマイボトルに、翔君の目が細められた。
差し出したのは俺が持ち歩いているマイボトルだし、その中の水は明らかに減っているし…
いくら常温がいい、って言ったって、飲みかけの水よりは、冷たくても新しい水の方がいいだろう。
「ごめん、新しい水をとって」
「いや、いい、ありがと。ちょっと寒いし、これがいい。お前の水素水、なんか効きそうだしな」
俺に力無い笑顔を向けて翔君はボトルを受け取ると薬を口に放り込み、水を呷った。
「薬…ちょっと苦かったかもしれないけど…」
「んーこれ、お前の水だろ?」
「…そうだけど…」
「どうりでまろやか〜」
確実に具合が悪い癖に…
笑ってそんな風に言った翔君に何て返せばいいか分からずなくて、とりあえず苦笑で返す。
「お水…たくさん飲んだ方がいいと思うから、今日はそれ…飲んで?」
「でも、お前用だろ?いいよ、そこで冷えてるやつを常温に戻しとくから」
「俺はいつも飲んでるし、風邪にもいいから…あの、しょーくんが嫌じゃ、なかったら」
そう言ってから、そんな風に言われたらたとえ嫌でも断りにくいって事に気付いて、慌ててその手からボトルを受け取る。
「ご、めん。普通の水の方がいいよね。ペットボトル、出しとくから」
「いや…風邪なんて引いてる場合じゃないから、お前が良かったら、それ今日は貰っていい?」
「もちろん」
「悪い、色々気を使わせて。ありがと、松潤。もう俺は気にせず始めていいから」
「う、ん……お大事に」
笑って水をまた口に含んだ翔君を見ながら、その
松潤
って呼び方が、翔君からの線引きに聞こえて…
でもそれ以上俺にできる事はないから、それぞれの場所に散らばっていたスタッフに聞こえる様に、ミーティング開始の声を上げた。