第5章 I miss you〜SJ〜 2
今日はメンバー揃っての打ち合わせ。
昨日はあれからやっぱりあまり眠れなくて…
寝不足の顔をニットキャップで隠してミーティングルームのドアを開けた。
「おはようございます」
俺の言葉に、既に来ていた数人のスタッフから挨拶が返ってきて…
メンバーを含めての打ち合わせまでにはまだ少し時間があるから、予想通り一番乗りは俺で、その事に少しホッとする。
眠れない暗闇の中で考えても…
結局自分がどうしたいか、どうするべきか、なんて分からなくて。
玄関に座り込んでいた翔君の表情が忘れられなくて…
中まで入らずに暗いあの場所に座りながら、翔君は一体何を考えていたんだろう。
でも、それはいくら想像したって分からなくて…
当たり前だよね。
自分の心すら、何がどうなのか分からないんだから。
本当に…
自分の心なのに、何でこんなに侭ならないんだろう。
こんな自分が…嫌になる。
「おはようございます」
正直、昨日の今日で翔君と顔を合わせるのは憂鬱だった。
その行動の意味も分からない上に、ニノとの関係を誤解されているだろうし。
しかも…
その関係は、誤解って言い切れないものだったりするから。
でも、入ってきた時挨拶したその声と、俺と同じ様に目深に被ったキャップの下の顔色を見て、憂鬱なんて気持ちは一気に吹き飛んだ。
明らかに枯れている声と、熱があると分かる赤らんだ顔。
キャップから僅かに見えた目は、いつもの鋭さの無い、視点が合っていない潤んだものだったから。
「しょーく」
「おはよ〜。翔さん、風邪らしいから、今日はまいてこうか〜」
でも、俺が声をかける前に、翔君の後ろから入ってきたニノが挨拶と一緒に翔君の現状を皆に告げた。
「風邪じゃねーって。大丈夫だから」
「いやいや、その顔と声でそんな事言われたって、誰も信じないって。ねぇ潤くん、なんか薬持ってる?」
「うん、しょう…さん、薬、何も飲んでない?」
「…丁度、切れてて」
怠そうにイスに座った翔君は、手で頭を押さえながら、それでもボソッと答えを返してくれた。
「薬、取って来るから…お水も、いや、お白湯がいいかな…」
「薬だけくれたらいいから」
突き放す様にそう言って、翔君は机に突っ伏した。
やっぱり…
俺の心配なんて、迷惑なだけだろうけど…