第3章 声を聴かせて〜NJ〜 2
「あの…ニノ…大丈夫?」
収録ではいつもの通りのニノだったけど…でも…何かが違う。
「んー別にどうもしないけど?」
「でも…」
「平気だって。あっ、ねぇねぇ大野さん、ちょっとこれ見てよ」
軽く笑って俺をいなすと、また大野さんの方へ行ってしまったニノ。
でも…だって…違うじゃん。
いつもみたいに、俺の目を見ていない。
笑っているけど、その目の奥を覗かれない様に、バリアを張ってる。
俺たちが仲良くなる前の…ニノが俺に心を開く前にその目はよく見たから、分かるんだ。
ニノは、また俺と距離を置こうとしてる、って。
「なぁ、松潤」
大野さん相手に爆笑しているニノをボーッと見ていたから、名前を呼ばれている事にも気付かなくて…
「なぁ、潤って」
「……え?」
いきなり肩を掴まれてビクッとなりながら振り向いたら、同じ様に驚いている翔君の顔があった。
「ごめん、気付かなくて…何?」
ドングリだった目を緩めて笑った翔君がソファーを回って俺の隣りに腰を下ろした。
「びっくりし過ぎだし、お前。まぁいいや。この間オーストラリアに行った知り合いにこれ貰ってさ。喉にいいからって家に置いてただろ。いっぱい貰ったし、やるよ」
「あぁ…ありがと」
「しかもこれ、食べるだけじゃなくて、肌に塗ってもいいらしい。お肌すべすべになるんだってさ。ハチミツだし…今度俺が塗ってやろうか?」
そう言った翔君の目には…
正面から見ている俺だから分かる程度の、艶が含まれていて…
「ありがとう。丁度無くなりそうだったから、助かる」
その目線に気付かないフリをして、渡された瓶へと目線を移した。
「無くなりそうだな、って思ってたんだよ、この前。だから丁度良かっ」
バタン
楽しそうに笑う翔君の言葉を遮る様に、大きな音がして楽屋のドアが閉まった。
そちらを見て…楽屋を見回して…
その音を立てたのはニノだって、分かって…
俺は慌てて、その後を追いかけるために立ち上がった。