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恋の話をしよう【弱虫ペダル】短編集

第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎


「んじゃーまぁ、そういうこったから後は大丈夫だろ。さ、帰ンぞ」

後輩達に目配せをする荒北。


「エッ!!」


その言葉に荒北の隣で一年女子達が驚く。

「い、いやですよ?」

「私達、最後までここに居ます!」

「そーですよ!あの人が気になるし!」

「ウッセ!テメェら、俺がいなきゃもともとあの地味女のこと見捨てるつもりだったくせに今更いい子ぶってんじゃねぇ!」

「見捨てるなんて、そんな!」

「そうです!そんな言い方酷いですよ!」

「荒北先輩って顔だけじゃなくて心まで不細工なんですね!」

「あー!もうマジでテメェらちょっと来い!この際だからはっきり言うがなぁ!」

「何よ!」

「ブス!不細工!!」


ギャーギャーと言い合いながら去っていく4人。
去り際、チラリと荒北がこちらを見て笑った。


「はっ、全く損な奴だ、、、」


苦笑しながら俺は壁に背を預けた。


「そんなことをされては今度礼をしなければならないではないか」


荒北にはバレていたのだろう。
悔しいが1人にしてもらえたのが今はとても有難い。


必死で自転車に乗った後の全力疾走。
緊張の連続。そして額からの流血。


本当は足元がふらついて立っているのもやっとだった。
何とか壁に背中を預けると、一気に足から力が抜けた。


「、、、」


視界がボヤける。まぶたが重い。


それでも頭に浮かぶのは彼女の姿で。


明るい笑みをたたえて歩いて行った彼女。
きっと大丈夫。
そう思うのに。


本当にそうだろうか?
自分は一度気づけなかったではないか。
また嫌な思いをしていないだろうか。
あれ以上傷つけられてはいないだろうか。


心配で。
不安で。


「早く、、、顔が見たい」


すぐにでも抱きしめたい。
そしたらもう離さないのに。


“私、もうすぐ転校するの“

今更になって耳鳴りのように聞こえる彼女の言葉。
さっきは必死すぎて聞き返すことができなかった。
あれは本当なのだろうか。


本当に君は俺の前からいなくなってしまうのか?


「笹原さん、、、」


君が居なくなってしまった後なんて、想像すらできないというのに。



縋るように手を伸ばした。



その先に



「東堂くん!?」

「笹原さん、、、?」


夢なのか?
彼女の姿が見えた気がした。

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