第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
「美月、これ、そっちに詰めて」
「うん、、、」
お母さんに促されて段ボールを運ぶ。
着々と進んでいく引越し準備。
色々な準備に追われて日々を過ごしていくうちに、いつのまにか終業式の日がやって来た。
「あー!そうだこれ、
「、、、」
静かになった部屋にいると思い出してしまうのは、
「あったあった!美月、これもそっちね」
「うん」
「、、、やっぱり引っ越すの嫌?」
「え?」
「ずっと元気ないでしょ?」
「そんなことないよ。新しい所、どんな所か楽しみだよ」
「そう?それならいいんだけど、、、」
「うん」
「もうあなたも高校最後の年だし、お母さんはまだ残ってもいいと思ってるのよ。学校にもまだ先生にしか言ってないんだし」
「それは、どうせ仲良しの友達もいなかったし、お別れ会とかされても困ると思ったから」
「本当?美月、仲良しの子いたんじゃないの?今回は楽しそうだったじゃない」
「いないって!!」
思わず大きな声が出てしまう。
「、、、ごめん。本当に大丈夫だから」
「ううん、分かった。もう言わないね」
「うん、、、」
もう友達でさえもなくなってしまった。
最後は笑顔でお別れしたかったのに。
またあの庭で2人で笑って、、、
あの庭で、、、
「あ、美月。そういえばこれ、制服のポケットに入ってたわよ」
「、、、!!」
私はお母さんの手の平に乗るそれを見て目を見開いた。
「お母さん、ごめん。私、ちょっと学校に行ってきてもいい!?」
それはあの日、東堂くんにもらったスズランの花を押し花にした栞だった。