第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
わんわんと泣いている女子達を抱きしめる笹原さん。
あーあ、もう一緒になって泣いてしまっているではないか。
これではどちらが一年か分からない。
「ふぅ、、、」
そんな姿にホッとしたのも束の間、目の端でそっと動く影。
「オイオイ、それは無いんじゃナイの?」
尖った濁声に声を掛けられて影がビクッと震える。
その目は一瞬怯んだようだったが、すぐにこちらを睨み付けた。
「ッ!!何よ!私達のこと言いたきゃ皆に言えばいいじゃない!!」
「そうよ!もうどうだっていいんだから!」
「私達が悪かったって言えばそれで良いんでしょ?」
真っ赤な顔で吠える彼女達。
先程までとは違って自分でも驚くほど冷静にその様子を見ている自分がいた。
口を開きかけた俺の腕にそっと柔らかいものが触れる。
振り返ると彼女がいた。
「東堂くん、、、」
その目にはまだ涙が残っているのに、その奥に強い光が見えた。
自分が話す。
そう、その光は言っているようだった。
「、、。分かった。少し離れたところにいる。何かあればすぐに呼ぶのだ」
そう言って彼女の肩にポンと手を置いた。
小さく細い肩。ヒラリと揺れる土埃のついたスカート。
その姿は痛々しく、再び傷つけられはしまいかと嫌な音を立てる胸。
「うん、、、!ありがとう!」
だが擦りむいた膝でタッと一歩、軽やかに踏み出して振り返った彼女の瞳は力強く、そんな俺に微笑んでみせた。
「、、、」
あぁ、そうだった。
君はいつだって俺なんかよりもずっと強かった。
「、、、行くぞ。荒北」
「ハッ!?イイのかよ」
俺は片方の眉尻を吊り上げた荒北を引っ張ってその場を離れた。
「いいのだよ」
あの日教室で真っ直ぐに手を挙げた君。
俺の不満をコロコロと笑い飛ばした君。
一見すると大人しくて、弱々しくて、ちょっとした風ですぐに折れてしまいそうなのに。
本当は俺なんかよりもずっと強くて。優しい。
まるであの花々のように。
「紳士たるもの、こういう時にはさっさと身を引けなければな」
「全ッ然!分かんねェ!」
「ふっ、これだから貴様はモテないのだ」
また実感させられてしまった。
気にかけているつもりが、守っているつもりが、いつだって救われているのはこの俺なんだ。