第3章 秘密の花園【東堂尽八】✳︎リクエスト作品✳︎
「えっ?演技?」
「本当?」
「学園祭って確かに毎年3年は劇をするけど、、、」
皆、困惑している。
そうだ、だってこんな話あまりにも突拍子もない。
「東堂くん、、、、」
私は東堂の横顔に声を掛けた。
彼は変わらず笑顔のまま。と思った矢先、
「ッ!!」
サッと身を翻した彼はしゃがみ込む私の目の前に片膝をついた。
そして、そっと私の手を取る。
「あ、あああ、あのっ!と、東堂くんっ!?」
距離が、、、近いです!!
突然のことにおかしな声が出る。
そんな私を見て東堂くんはフフッと微笑んだ。
「そうだな、クラスで虐められている大人しい転校生のピンチをクラスの人気者が救う。そして親しくなった2人はやがて恋に落ちる。そう、こんな風に、、、」
東堂くんは大きな瞳で私を捉えたまま、ゆっくりと私の手をその唇に近づける。
そして目を閉じるとそのまま小さな口付けをした。
今、なにが起こっているんだろう、、、?
頭の中は真っ白。
それなのに目の前の光景から目を離すことなんてできなかった。
時が止まったかのように、この場の匂い、明るさ、温度、そして彼の感触、、、その全てが鮮明で。
「、、、」
その静けさは周りの人達までも包み込んで。
「、、、」
どこまでも優しくて、どこまでま甘くて苦い。
そんな、、、キス!!?
「う、、、あ、あわ、、、」
私の動揺なんて何のその。ゆっくりと顔を上げた彼の瞳がキラリと光ったかと思うと、低くハッキリとした声でこう言い放った。
「好きだ」
「、、、ッ」
私の頭は今この瞬間にきっと爆発してしまったのだろう。
全身の力が抜けて私はその場にヘナヘナと崩れ落ちた。
「と、、、そんな話を考えてみたのだが。如何だろう?諸君?」
不敵な笑みを生徒達に向ける東堂くん。
そして
「ついでに今、現在!この俺の親友役と相手役の素敵な女子を絶賛募集中だ!!」
彼がそう言うと
「キャーッ!!!」
「はいっ!はいっ!!相手役は私やりますっ!」
「何言ってんの!?東堂様!私ですよね!!?」
「し、親友役は俺!俺しかいないっしょ!」
「テメッ!こら!抜け駆けすんじゃねぇーし!」
この場は一気に東堂くんの空気に変わった。
もう誰も東堂くんに怪訝な目を向ける人はいなかった。