第1章 冷たい手【巻島裕介】
美月とは腐れ縁というかなんというか家が隣同士ということもあって、まだ物心つく前からよく遊んだ。
小さい時から美月は明るくて、俺と違って友達も多くて。
俺はその輪の中には入れるわけではなかったけど、
「裕介!一緒に帰ろ?」
そう言っていつも俺の手を引いてくれたから
「あはは!裕介、本当にその服買うつもり?」
帰り道、いつも隣で花のように笑ってくれたから
俺はそれだけで幸せだった。
「え?裕介、総北高校に行くの!?な、なんで?」
総北に行くと話した時、いつも通る土手道で立ち止まった驚き顔が、やけに可笑しかったのを覚えている。
「もう決めたショ」
なんでだって?
それは君がそこに行くと言ったから。
「裕介はもっと頭いいじゃん!おじさんとおばさんは何て、、、」
ッハ!そんなの反対されたに決まってる。
だけど俺は
「んな事どうだっていいショ」
いつまでもこうして君の隣を
ゆっくり、ゆっくりと歩いていたかった。