第2章 幸せ者【御堂筋翔】
ユキちゃん、ごめんやで。
もう止まらへんわ。
君を他の奴に渡す?
そんなん考えんのもアホらしい。
やからゴメンやけど、、、ジャマすんで。
ユキちゃんの頬を掴む男の腕を掴もうとした時、パッとユキちゃんが飛び跳ねた。
「遠慮しとくわ!」
ホンマにピョンと飛び跳ねた。
その瞬間、ふわっと僕の鼻を掠めるユキちゃんの髪。
何て言ったかなんて耳に入ってこんかった。
せやけど、次に放たれた
「私、翔兄ちゃんと結婚するし!」
って言葉は何故かハッキリと聞こえてきて、僕の頭を真っ白にした。
君はいつだってそうやった。
何度驚かされたか分からへん。
ピョンピョン跳ねるように僕の周りを走り回って、いきなり突拍子もない行動をするんや。
僕がそれにどんだけヒヤヒヤして、どんだけ手を焼いてきたかも知らんで、君はいつだって笑顔で。
大人に近づいた今だって、隣を歩く君の足音がまるで飛び跳ねるように浮かれて聞こえるから、僕の気持ちもいつのまにか浮かれて。
そうやって君はどんなに暗い空も一瞬で幸せ色に変えるんや。
なぁ、ユキちゃん。何驚いた顔してんの?
驚いてんのは僕の方や。
「あ、、、!御堂筋さん、、、!!ちわっす!」
、、、何や?ザク。
君に挨拶される筋合いはないわ。
そんなことより、、、
「翔兄ちゃん、、、いつからそこに、、、あ!ちょっと!」
僕はユキちゃんの手を掴んで、頭を下げるザクの横を通り過ぎた。
何でこのザクが僕の名前を知ってんのか。
ユキちゃんとはどういう関係なんか。
どんな話をしてたんか。
「翔兄ちゃん!?あのっ、あの子は安本っていう子で、翔兄ちゃんのこと、、、」
そんなことは、どうでもええ。
「、、、さっきのはホンマなん?」
「、、、え?」
「僕と結婚するっていうやつや」
「、、、ホンマやったら翔兄ちゃんはどうするん?」
ユキちゃんはそう言って僕を見上げた。
はぁ?何やそれ。笑