第2章 幸せ者【御堂筋翔】
正直、今僕は驚いてる。
いつもの待ち合わせ場所で暫く待ってたけど、いつまで経ってもユキちゃんは来ぇへんし、やっぱりもう一緒に帰りたくないんやろな思って、1人でいつもの道を歩いてた。
いつもは幸せな色に染まっている空が、今日に限って真っ暗で、これ以上見てたら気が滅入るわ思って、自転車にまたがった。
早よ帰ろ。
早よ帰って、ユキちゃんに謝って、「やっぱ似合うんちゃう?」とか適当なこと言って、ただの兄貴になろうか。
そしたらユキちゃんはきっとまた笑って、「翔兄ちゃん、一緒に帰ろ?」って言ってくれるんちゃうか。
そんなこと考えながら、重い足を持ち上げて漕ぎ続けた。
そしたら、視界の中に見覚えのある影が入ってきた。
小学生みたいに小さくて、ピョンと元気に跳ねた2つ結び。
ドクンと跳ねた心臓が言った。
間違えようもない。
ユキちゃんや。
ケド、ユキちゃんの隣にはちっこい男がおって、何やら楽しげに、ユキちゃんもえらい笑ろてて、げんなりするくらいお似合いやった。
相手の男の顔は僕から見てもまぁまぁ整ってる。
よく笑って、愛想も良さそうや。
そんで小さいユキちゃんに合わせてゆっくり歩いたりする優しさも持ってるときた。
あーあ、あんなに笑て。
そりゃ楽しいやろな。
、、、僕と歩いてるときも君はいつも笑ってた。
やけど、ちゃうな。
僕が勝手に思い込んでただけや。
君の隣を歩けることが幸せすぎて、
君も同じように思ってくれてるんちゃうかって。
、、、ただのキモい勘違いや。
「一緒に帰ろ?」って言ってもらえる?
アホや。
そんなことで、
そんなことだけで満足できるんやったら、
初めっから好きになんかなってへんのに。