第2章 幸せ者【御堂筋翔】
「、、、あーあ!残念やなぁ。あの人ちゃうかったら勝てたのに」
「えぇ?、、、何やそれ?」
適当なことを言って伸びをする安本に思わず笑みがこぼれた。
「ぷっ、、、せやけど私、あんたのこと誤解してたわ」
「えっ!?どんな風に思ってたん?」
なぁ、安本。
あんた、ええ奴やってんな。
「んー、それは、、、ただの女好き?」
「何それ!すでに失恋で枕濡らす予定やのに、それに加えてまさかの悪口!?」
嬉しいわ。
この気持ちを認めてくれたことも、翔兄ちゃんのこと褒めてくれたことも。
「あはは、もう、笑かさんでよ」
「笑わそうなんか思ってない!俺は今悲しいんや!」
「ははは、あー、もう苦しい」
「、、、ケド、良かったわ」
「ん?何が?」
「ユキちゃんが笑ってくれて。今日ずっとおかしかったやろ?」
「、、、」
ふと思い出したかのように胸が痛んだ。
「何があったかは知らんけど、俺が惚れたんはめっちゃくちゃ笑ってたユキちゃんや。いつも元気で活発なユキちゃんや」
俯いていると、突然ムギュっと両頬を挟まれた。
「!!」
「大丈夫や!俺が保証する!」
「、、、!なんやそれ、無責任な、、、」
「無理やったら俺がもろたる!」
「ぷっ、なんやそれ、、、」
私はいつまでも私の頬を離さない大きな手をサッと退けて、ピョンと跳ねるように逃げた。
「遠慮しとくわ!」
不思議と心も跳ねているような、そんな気分で、
「私、翔兄ちゃんと結婚するし」
安本の顔を見た。
安本もきっと笑っている。
そう思ったのに、安本はポカンと口を開けていた。
「あ、、、ユキちゃん、あれ、、、」
「ん?あれって何よ、、、?」
振り向いて、私も口を開けた。
私達のすぐ後ろに翔兄ちゃんが立っていた。