第2章 幸せ者【御堂筋翔】

「しゃーないなぁ！ユキちゃんが話してくれへんのやったら、俺のこと話すわ！」

「、、、」


なぁ、何で、私なん？


「俺は安本和希。3年3組。サッカー部。得意科目は家庭科。俺、結構器用なんよ？」

こんな、小学生みたいな奴、一緒に歩くのも恥ずかしいやろ？

「あとはえーと、何言おかな、、、あ！俺、結構モテるんやで？」


ウワサしてた子、キレイやったよ？


「ってツッコミなしかーい！！」

「、、、ぷっ！はは、もう、笑かさんとって」

もう、敵わんわ。

「あ、、、」

「何？」

「初めて笑った、、、」

「はぁ？笑うくらいするやろ、人間なんやし」

「ユキちゃんは笑わへんのかと思ってた」

「はぁ？何それ？、、、っ！」


言いかけた時、視界が急に真っ暗になった。
温かくて柔らかい。
私は安本に抱きしめられていた。


「ちょっと！何す、、、」

「もう一個！！！、、、もう一個だけ俺のこと話してええ？」

「、、、」

その切羽詰まった声に私は暴れるのをやめた。
ゆっくりと優しく離される身体。
いつも笑ってる安本が口を固く結んでいた。


「もう気付いてるかもやけど、俺はユキちゃんのことが好きや」

「、、、何で？今まで話したこともなかったのに」

「一目惚れやった！1年の時に見たときからずっと、、、！」

「、、、はぁ」

エライ長い話やな。

「ケドずっと話しかけられんで、、、その、でももうすぐ卒業やし、このまま終わるのは嫌やなって思ってた。そしたら、こないだ！」

「、、、廊下でぶつかった？」

「そや！この機を逃す手は無いと思った、、、必死やった」

「、、、」

なんや、イメージ違うわ。
でも、、、

そう言う安本の顔は真剣で、嘘じゃないと思った。

「俺は、、、ユキちゃんを泣かしたりせぇへん」


そやな、、、きっとそうや。
きっと楽しいやろな。


「俺じゃアカン、、、？」


うん、アンタは良い奴や。
やけど、、、、


「ごめん、、、」


冷たくされても。
難しいの分かってても。
一緒に歩くのだけでしんどくても。



「私、好きな人おるんや」




それでも私は、翔兄ちゃんとおりたいんよ。