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恋の話をしよう【弱虫ペダル】短編集

第2章 幸せ者【御堂筋翔】


「あ、、、うん」

よく分からんけど、こいつに今の顔見られんのが嫌で俯いた。


「今日は1人なん?一緒に帰ろや」

「あかん。今日も1人ちゃうから、アンタと帰んのは無理や」

はっ!嘘ついてしまった、、、!!

「なんやぁ。残念やなぁ」

口を尖らせる安本。
咄嗟に嘘はついたものの、うまく断れてホッとした。
のも束の間、

「しゃーないなぁ、じゃあ校門まででええわ。一緒に行こ!」

安本はそう言ってパッと私の荷物を担いだ。

「はっ?何でそうなんの!?」

「ええやんええやん!しっかしこれ重いなぁ。何入ってんの?」

ニカッと快活に笑ってスタスタと歩いて行ってしまう安本の背は翔兄ちゃんよりは小さくて、

「あっ!ちょ、ちょっと!待ちーや!」

走ったらすぐに追いついた。







外に出るともう真っ暗で、ヒンヤリとした風が吹いていた。

「あーさっぶ!ユキちゃん、寒くない?」

「、、、」

や、やばい。
翔兄ちゃんおるやろか?
どーしよ!もう校門着いてまうやんか!!

「なぁ、ユキちゃん、寒いの大丈夫?良かったらこれ貸そか?」

ってウッサイなぁ!それどころちゃうねん!!




それどころじゃ、、、
ってもう、、、着いちゃったやんか、、、。


「、、、あれ?誰もおらんで?」

「、、、」

やっぱ、おらんか、、、。

「ユキちゃん?」

分かっててん。
分かってたのに、何でかなぁ。

「、、、ぐすっ」

また溢れて止まらんわ。





「なぁユキちゃんて、休みの日は何してんの?」

「何も、、、」

「テレビはどんなんが好き?」

「テレビなんか好きちゃう、、、」

「ははっ、冷たいなぁ」


あぁ、最悪や。
完全なる八つ当たり。
安本が怒らんの分かっててやってるやろ?


私は苦笑する安本を見上げた。



嘘をついてた私を責めるでもなく、嫌味を言うわけでもない。
いきなり泣き出した私に引くわけでもなく慰めるわけでもなく、安本はただ笑って取り留めもない話をした。


その顔は、誰かさんと違ってよく笑う。
それに意識してか天然なのか、その歩くスピードは私とおんなじで、それは思ったよりも楽だった。



こんな態度を取っても笑っている安本は多分、悪い奴ではないと思う。
そういえばこないだ、カッコイイってウワサされてたっけ?

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