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恋の話をしよう【弱虫ペダル】短編集

第2章 幸せ者【御堂筋翔】


「ハァハァ、、、」


こんなん、初めてや。


いくら走っても、いくら登っても、いくら使い果たしても、消えない。


「そっか、そうやんな!」
そう言って悲しそうに笑った君の顔が。

「そんじゃ、もう寝るわ!おやすみ、兄ちゃん!」
そう言って駆け出した瞬間に見えた今にも零れ落ちそうな雫が。



「、、、ハァ、、、」



何であんなこと言ってしまったんやろ。
完全に八つ当たりやん。


そんなん最初っから分かってたことやん。
ユキちゃんにもいつか好きな男ができる。
当たり前や。
そんで、そいつのためにオシャレする。
年頃の娘にとったら、なんもおかしくない。
やのに


それに腹を立てて、ユキちゃんに当たるとか、、、


「、、、キモ」


そうやってネチネチと僕のことを引っ張って離さない、このドス黒い何かが、消えへんのや。






「あれ?御堂筋くん、まだ残ってたんですか?」

「、、、」

「いっつも練習終わったら速攻で帰んのに、珍しいっすね。なんかあった、、、」

「うっさいわ、ザク。人のこと気にする余力があんねやったら、もっと速よ走ったらどうや?」

「す、、、すんません!!」

「、、、ハァ」




朝、ユキちゃんとは会わんかった。
いつもは起きるまで待って顔見てから、自転車に乗りにいくけど、今日は待たんかった。


会わす顔とか、、、ないやろ?
向こうだって会いたくないやろ?






まして、、、一緒に帰りたいなんて、、、。






はぁ?そんなん思ってくれるわけないやろ?
やのに僕は、何で自転車にまたがってんの?
何で、ユキちゃんの帰りに間に合うように急ごうとか、、、アホなん?


謝ったら許される?
もしかしたら待ってくれてるかもしれへんとか、都合がええにも程があるやろ。



今ごろ、好きな奴にでも愚痴ってるよ。
そいつはきっと大喜びや。
あんな可愛い子がそんな風に泣きついてきたら、やることなんか決まってる。

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