第2章 幸せ者【御堂筋翔】
それから数日後。
「うーん、、、」
私は鏡の前に立ち決めかねていた。
「バッサリいっちゃう?それか、、、」
何故こんなことになっているのかというと、こないだ言われた「小学生みたい」がきいた。
冗談っぽかったとはいえ、かなりのダメージ。
それに最近翔兄ちゃんが余り話してくれないことも気になる。
いつも通りと言われればそうなんやけど、何かが違うような気がする。
帰り道も兄ちゃんのまとう空気はポカポカと温かくない。
もしかして、私みたいなのと歩くのが嫌になったんやろか!
気のせいか、前を歩く兄ちゃんの背中はいつもよりも遠く感じた。
そんな時、クラスの子がイメチェンと称して髪をバッサリ切った。それがとても可愛くて、前よりもずっとあか抜けて見えた。
私も髪を切ったら大人っぽく見えるやろか?
翔兄ちゃんと同い年、いやそれは無理でも年相応には、、、。
せめて一緒に歩いても恥ずかしくない程度には、、、!
そんな事を考えながら、2つに結んだ長い髪を撫でた。
「うーん、、、」
翔兄ちゃんは、、、どっちが好きやろか。
「どないしたん?」
突然聞こえたその声に身体が跳ね上がった。
「きゃあっ!あ、翔兄ちゃん?!」
「、、、何してんのん?」
「な、、、なんもしてへんよ!」
私はヘアカタログの雑誌をパッと閉じた。
「、、、ほうなん」
そう言ってサッサと去ろうとする翔兄ちゃん。
「っ!翔兄ちゃん!!」
でもせっかく翔兄ちゃんから話しかけてくれた機会を逃したくなかった。
「、、、何?」
「あ、あのな、、、」
ドキドキと心臓が暴れまわる。
やけど、、、負けへん!!
「この髪型、どう思う!?」
できるだけ明るい声で、バッと雑誌を開いて見せた。
髪を切るならこれと決めていた、大人可愛いボブ。
なぁ、これやったら恥ずかしない?
こんな風になれたら兄ちゃんの隣、歩いてもいい?
「、、、」
ジーと見る兄ちゃん。
「なぁ、、、もし私がこんな髪型したら、、、」
翔兄ちゃんは可愛いと思ってくれる??
「似合わへんよ」
言いかけた言葉は翔兄ちゃんの冷たい声に遮られた。
「え、、、?」
「ユキちゃんには似合わへんよ」
遮られて静かに落ちた。