第1章 冷たい手【巻島裕介】
「何で裕介が私の幸せを決めつけんの?」
「いや、だって普通に考えてそうだろ?春からは楽しい大学生活が待ってんだ!もっと優しくてカッコいい奴も山ほどいるし、もっと気が利いて連絡だって頻繁に、、、」
「そんなの!気が利いたデートがしたくて、連絡がもっと欲しいなら裕介なんて好きになってないわよ!」
「う、、、」
「いい?私は、、、っ」
美月が言葉を詰まらせて俯く。そして顔を上げると再び大粒の涙が流れ落ちた。
「私はいつか私に彼氏ができたなんて裕介に話したくないの。裕介から彼女ができたなんて話、聞きたくないの。私の知らないところで、裕介が知らない人と、、、なんて想像したくもないのっ。だって、私、、、これからも裕介の1番近くで、、、」
あなたの隣を歩いていたいの、、、。
彼女が詰まりながらも必死で息を吸いながら言ったその言葉は、いつか俺が思ってた、、、
なんだ、、、
俺たちはずっと同じことを考えて、こんなに苦しんでたのか、、、。
「ひっく、、、」
美月の泣き声を聞きながら俺は小さく深呼吸をして、再び彼女の頬に手をやった。
「美月。たぶん、俺は、、、いつまでたってもこんなんショ」
「、、、ひっく」
「イギリスに行くのも、やめるつもりはない」
「、、、っく」
「いつ帰ってこれるかも、分からない」
「、、、スン、、、」
「多分あんまり連絡もしない、、、いやっ、そのできるだけ、する、、、ケド」
「、、、」
「それでも、もしそれでも良かったら、、、」
「、、、っ」
美月と目が合う。
俺はその目を真っ直ぐに見つめた。
「俺と、付き合って下さい、、、ショ」
「はい、、、!」
少し前のめり気味で答えた彼女の顔は、今までで一番、可愛いと思った。