第1章 冷たい手【巻島裕介】
「その写真は、、、」
美月は瞬きもせず何かを待っているように俺を見ていた。
俺は嫌がる口を無理矢理こじ開けた。
「なんつーか、その、、、側に置いておきたかったんショ」
美月はまだ俺から目を離さない。
そうだな、俺はまだ肝心なことを言えてない。
「なんでかっていうと、その、、、大切な写真だったッショ」
なぁ、言ったよな?
写真撮れただけで喜んだって。
「俺もコイツを撮ったときスゲー嬉しかったから」
そう言った途端、また涙が溢れた。
「、、、うそ、だって裕介あんなに嫌がって、、、」
どうしたらいい。
どうすれば、この気持ちが伝わるんだ?
「それは、、、っ!その、、、恥ずかしかったッショ。、、、好きなコと写真撮るとか、、、」
あー、チクショウ、、、!
言っちまったッショ、、、。
「うそ、、、!だって、いつも全然笑ってくれないのに、、、」
「それは、その、、、」
気を抜いたらこの顔はすぐに緩んでしまうから。
そんなことを考えてる間にも美月の涙は溢れに溢れて。
「一緒に帰るのだって、皆に知られたくないって言うし、、、私といるとこ見られるのがカッコ悪いからだって、、、」
「違う!、、、違うんショ。美月と居るときの俺は、、、その、楽しくて、、、誰と居るときのよりも多分笑ってるから、、、見られたくなかったッショ」
「じゃあ何で!!何で、、、私のこと避けてたの!?」
美月が叫んだ。
俺は小さく息を吐いた。
「、、、それは寂しい思いをさせたくなかったんショ」
「、、、」
美月の顔を窺うと相変わらずの表情で、、、。
そんな顔をさせたかったわけじゃないッショ。
俺の胸は締め付けられた。
「もしも、、、もしも付き合えたらってずっと考えてたッショ。だけど、俺はイギリスに行くし、いつ帰ってくるかも分かんねーし、多分そんなに連絡もできねーし、、、。そんな寂しい思いをさせて、俺を待たせてる時間があったら他の奴と付き合った方が美月は幸せなんじゃないかって、、、」
「はぁ!?」
そこまで言ったところで俺の言葉は美月に遮られた。
驚いて顔を見上げてると、美月はすごく怒ってた。