第1章 冷たい手【巻島裕介】
イギリス行きの荷物をまとめている時、ほとんど空っぽになった机の引き出しにこの写真だけが残っていた。
ここ最近、敢えて見ないようにしていてすっかり忘れてたのに。
久しぶりに見たそれには、幼い俺と君が写っていた。
本当は分かってたショ。
置いていかなきゃって。
だけどせめて、
もう君を諦めないといけないのなら、
これくらいの思い出に
すがったってバチは当たらないだろ?
未練がましくバッグに詰めた、
捨てきれなかった気持ちの欠片。
誰に言うつもりも、見せるつもりもなかったそれを君に見られた。
フツー引くよな?笑
なぁ、一体今どんな顔して、、、
俺は窺うように美月を見上げて唖然とした。
「ショ、、、!?」
美月の目からポロポロと大粒の涙が流れていた。