第1章 冷たい手【巻島裕介】
この写真を撮ったのは高校の入学式の日。
家が近所っていうのもあって、おふくろが美月を誘って一緒に学校まで行くことになった。
俺はおふくろと一緒に美月の家のインターホンを押して待っていた。
着慣れない新しい制服が、なんかソワソワして逃げ出したかった。
「はーい!お待たせ!!」
そう言いながら慌てて出てきた美月は、新しい制服がよく似合っていて急に大人びたように見えた。
「わー!美月ちゃん!新しい制服よく似合ってるわねー」
「へへ、、、そうかな?」
「ね、裕介!あんたもそう思うわよね?」
「えっ!いや、、、」
俺に振るなっての!っつか、おふくろ何だッショ、その顔はッ!全然グッジョブじゃないッショ!!
俺はできるだけ美月の方を見ないようにした。
だから校門前で写真を撮るってなった時だって、隣に並ぶのが恥ずかしくて嫌だった。
何だか居心地の悪い気持ちで撮ったのを覚えている。
だけど、
「裕介〜!こないだ撮った写真!できたわよ!」
「写真?」
「入学式の日撮ったでしょ?これ、写真立てもついでに買っといたから、美月ちゃんに渡しておいてね!」
そう言って渡された写真は、満面の笑みを浮かべる可愛い美月と、微妙な顔で笑う気持ち悪い俺が写っていた。
正直自分の写真を見るのは気持ちのいいもんじゃなかったが、なぜか胸の辺りが温かくなった。
そして気がついたら勝手に俺の顔は綻んで、、、
「あとね、、、あ!ちょっと裕介!!」
それをおふくろに見られまいとすぐに自分の部屋に戻って、写真は机の引き出しにしまった。
その後、それを見るのは何だか気恥ずかしくてあまり見ることはなかったが、その引き出しには何も入れず、写真に傷がつかないように大切にしまってた。
ハ!何でかな?それがあるってだけでなんかあったかい気持ちになって、頑張れたこともあったかな。
なんてゆーか、ちょっとしたお守りみたいな。