第1章 冷たい手【巻島裕介】
空港に着いてからスマホのメール履歴を確認する。
前に東堂くんから裕介が乗る飛行機の情報を教えてもらっていたのだ。
「11:26発、、、4番、、、ん?」
ふと指が滑って下にスクロールするとまだメールが続いていた。
『巻ちゃんの良さが分かるとは笹原さんは趣味が良いな!巻ちゃんは難しい奴だが、君が本気で戦うならば俺は全力で応援しよう!何でも言ってくれ。我が永遠のライバルを頼む。 東堂』
、、、東堂くん。
頼む、なんて。
違うの。私全然ダメなの。
ブスで、意思が弱くて、行動力もなくて、
あげくの果てには何かと理由をつけて、
振られることから逃げてたの。
陽子も、東堂くんもこんなに応援してくれてたのに、、、。
私は喉の奥に感じた熱を飲み込んで、走った。
あのヒョロッとした背中を探して。
今だってね、本当は怖いの。
裕介と私じゃ釣り合わないんじゃないかって、
裕介は私なんか相手にもしないんじゃないかって、
自信がない。
だからせめて今の関係のままでも
ずっと彼の隣にいられるなら。
ご近所の幼馴染。
そんな関係も悪くない。なんて思っちゃうの。
だけど、、、、
「あ!」
長い長いエスカレーターの先にあの玉虫色が見えた。
私は急いで手に持っていたスマホの返信ボタンを押した。
『裕介、発見!追いかけます!ありがとう!』
急いでたから変な文章だけど、、、
東堂くん、私、あなたの思うような女の子じゃないけれど、もう逃げたりしない。
私、誰よりも近くで彼を見ていたいの。
ダンダンダン!と音を立ててエスカレーターを一気に駆け下りる。
もう少し、、、もう少しで、、、!
捕まえられる。
「裕介!!」
そう叫んだのとほぼ同時に裕介が振り向いた。
玉虫色の長い髪がふわりとなびいて、ずっと見たかった顔が見えた。
「美月、、、?」
ずっと聞きたかった声が聞こえた。