第1章 冷たい手【巻島裕介】
新学期。
私はただボーッと学校への道のりを歩いていた。
相変わらず裕介からの連絡はないし、私も連絡をしていない。
ただボーッと祐介の家の前を通り過ぎて、ここまで来た。
「美月!」
そんな私の肩を陽子が叩いた。
その顔は幽霊でも見てるみたい。
「あ、陽子、おはよ〜」
「おはよ〜じゃないわよ!何であんた学校に来てるのよ」
「へ、、、?」
「今日は巻島くんを見送りに行くんでしょ!?サプライズするんでしょ!?」
「それね、やめた」
私はニッコリと笑ったみせた。
「は!?」
「だって、、、夏休みの間中、ずっと連絡取ってないんだよ?祐介がそれで大丈夫なら、それくらいの関係だったってことじゃない?それにほら新学期初日から休むなんて内申に響きそうだし?、、、ドラマはドラマだから面白いんだよ。私がそんなサプライズしたって、、、」
裕介はきっと喜ばない。
陽子は口を開けてしばらく固まった後、溜息を吐いた。
「、、、あ、そ。あんたがそう決めたならいいわよ。たしかに今年受験の私達には内申も大事だしね。ちゃんと大学行って就職だってしなきゃ生きていけないし、、、」
うんうん、、、そう、そうだよ。
現実、これはドラマじゃなくて現実なんだから。
「そんで、そこそこの彼氏作って結婚して、、、」
「うんうん」
「そのうち子供が生まれました〜!なんて、年賀状が届くのよ!ふとした時に巻島くんから」
「え、、、?」
「あ!そっか。あんたは巻島くんと連絡取ってないから親伝いに聞くかもね。巻島くん、結婚して赤ちゃん産まれたらしいわよ!あんたも早く結婚しなさい!なんて急かされて、さ」
「、、、」
「あんた達はそういう将来を選ぶってことなんでしょ?それもいいんじゃない?」
陽子はポンと私の肩を叩くと、呆然とする私を残して「さっ、今日から勉強頑張るわよー」と言ってサッサと教室へ向かった。