第1章 冷たい手【巻島裕介】
「後悔するなよ、巻ちゃん」
「は、、、?」
プツ。
「ちょっ!ちょっと待つッショ!東堂!?」
電話は、切れていた。
「、、、」
後悔するなよ。
だって?
ハ!ふざけんな。
コツ。
視界の中に茶色いローファーが入って止まった。
俺はゴクリと喉を鳴らした。
後悔するぐらいだったら、俺は今こんな風にこの場所にいないッショ。
なぁ、どうしてここにいる?
学校は?
今、授業中だろ?
「祐介」
「う、、、美月」
頼むからそんな目で見ないでくれ。
なぁ、今朝俺がどんな気持ちで家を出て、お前の家を眺めてたか知ってるか?
最後に見送ってくれるのがお前だったらって、俺が何度想像したか知ってるか?
「祐介、私、、、」
頼むからもう喋らないでくれ。
俺がどんだけその声を聞きたいと思っていたか、、、
「私やっぱり祐介と一緒にいたい、、、!」
その顔で、その声で、、、。
頼むから、、、。
どんだけこうしてお前を抱きしめたかったか、、、
何にも、知らないくせによ。