第1章 冷たい手【巻島裕介】
「俺は、緑色の髪の気持ち悪い男より、可愛い女子の味方なのだよ!」
「はぁ?こんな時に何を、、、」
「こんな時だからこそだろう!」
「、、、ッ!」
「それにこれは彼女が決めたことだ。俺は何もけしかけてなどいない」
そう。彼女は俺に一通りの事情を話した後、こう言った。
「東堂さん。私、もう嫌なんです、、、。裕介の大事な時に側にいない。そんな自分にはもうなりたくない。私、もう、、、諦めたくないんです!」
その瞳にはもう涙などなく、あるのはただ強い意志。
それなのに彼女の表情はすぐに曇った。
「だけど、、、どうしたらいいのか分からないの。裕介はどんどん遠くへ行っちゃって、、、」
こんな私じゃ追い付けない。
そう言って彼女は俯いた。
そうだな。巻ちゃんはそういう奴だ。
本当にズルイ、、、。
「、、、それでも追いかけたいのか?」
「、、、はい」
小さな声で、しかしはっきりと彼女は答えた。
「私、バカでどうしようもないけど、、、それでも裕介と、、、一緒にいたいの」
そう、これは彼女の中で決まっていたこと。
俺はそんな彼女の手助けをしただけ。
「だったら捕まえるしかあるまいな」
「えっ?」
「逃げ場のない、アイツがもう逃げられない場所で、、、」
「それって、、、」
「フフン」
「巻ちゃん!」
「アァ?」
珍しく苛つく巻ちゃんの声が聞こえた。
しかしこれは譲れんのだよ。
彼女は決めたのだな。
そして行動したのだな。
ならば俺もその生き様に答えねばならんからな。
「後悔するなよ」