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恋の話をしよう【弱虫ペダル】短編集

第1章 冷たい手【巻島裕介】


「総北の今泉選手、飛び出しました!その後を箱学の福富選手、東堂選手が追いかけます!おっと、しかし!東堂選手の前を、巻島選手が塞いだー!!」




突然クリアになった実況から聞こえてきたのは、裕介、、、?



東堂くんは裕介によく電話をかけてくる人だ。
裕介と仲の良かった私にも結構な勢いで話かけてきてくれた面白い人。
2人はよくレースで一緒に走って、それはそれは楽しそうで。
いつも、アイツには負けたくないって言ってたっけ?
あんまり感情を表に出さない裕介が、東堂くんとのレースの話になるといつもより饒舌で。
私はそんな裕介を見るのが毎回楽しみだったんだ。



インターハイ、裕介にとって最後のレース。



この3日間、2人はどんな戦いをしたんだろう。
私は何も知らないや、、、。




「巻島選手の大ぶりなダンシングで東堂選手は通れない!しかし東堂選手も諦めません!お互い虎視眈眈と前を狙っています!!」




どうして、、、聞かなかったんだろう?
どうして、、、?
自分から聞けば良かったじゃない。



インターハイいつ?もちろん応援に行くからね!
ねぇねぇ!東堂くんとの勝負はどうだったの?



迷惑そうな顔ならいつもされてた。
それが彼の普通じゃない。



「おぉーっ!!そんな2人を、、、あれは京都伏見高校の御堂筋選手っ!一気に抜いたーーっ!!2人は追いつけません!!足が残っていないようです!!」


裕介、、、!


会場が一気に騒ついた。



「巻島選手!小野田選手の背中を押す!箱学も真波選手の背中を押しました!御堂筋選手を追いかけさせます!!」







「小野田くん?1年生?」

「あぁ!聞いてくれ。アイツ、スゲーんだ!初心者のくせに1年生レースで登りを取ったッショ!クライマーだ!しかも面白れぇ!今年のインターハイまでにはきっといいクライマーになってるッショ!」


3年生になってすぐ、帰り道で裕介は嬉しそうに語った。



裕介。ずっと、、、1人だったもんね。
ずっと待ってたもんね。




「美月!今年はいけるッショ!金城が最高のチームを作った!絶対にこのジャージを1番ゴールへ運んでみせるぜ!」




小野田くんに、託したんだね。
良かったね。
小野田くん、いい選手になったんだね。



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