第1章 冷たい手【巻島裕介】
「よーし、わかった!」
私の話を一通り聞いた陽子は、気の強そうな顔をもっと強くして何かを決心したように言い放った。
「え、、、?」
「乗り込むわよ!インターハイ!!」
「えっ、、、えぇっ!?あの、陽子?話聞いてた?私、誘われてないんだって!それって裕介はもう来てほしくないってことで、きっも私のこと迷惑だって思って、、、」
「うるさい!この寝ぼけ娘!!」
ね、、、寝ぼけ娘?
私、全然眠くなんてないんですけど、、、。
戸惑う私に向かって陽子はニヤリと笑って言った。
「どっちにしたって私は金城くんのレースが見たいから行くつもりだったのよ」
あ、、、そういうこと?
「1人で行くなんて真っ平なんだから、アンタも付き合いなさい」
「でも、、、」
「でももヘチマもないわよ!アンタに拒否権なんかないんだから」
でももヘチマも?
陽子ちゃん、あんた本当に同い年ですか、、、?
「いい?今度の金曜日、朝6:00に駅前集合よ!」
「6:00!早くない?一体、どこに、、、?」
「レース最終日なんだから、早く行ってなんぼでしょ?本当は1日目から見たかったけど、3日目しか私の予定が空いてないのよね〜。まぁ、うちなら1日目、2日目で落ちるなんてことは無いでしょ。よーし!行くわよ、富士山!!」
「富士山!?」
この本気でレースを見たいのか見たくないのかよく分からない陽子に連れられて、私はレースを見に行くことになったのだけど、、、
『ごめん、美月。今日行けなくなったわ!1人で行ってきて!!』
駅に来ないと思っていたら、陽子から届いたメッセージはコレだった。
「はぁ!?何考えてんの!?1人で行くなんて、、、私、、、」
陽子が行くから行こうと思ったのに、、、。
私1人でなんて行けないよ。
そう肩を落とした途端、スマホが鳴った。
『あっ!金城くんの勇姿、ちゃんと写真撮って送ってね!お願いね!』
と陽子からだ。
なんていうか、、、陽子ちゃん、ひどくない?
「あー!!もうっ!仕方ないなぁ!!今度パフェでも奢ってもらお!!」
かくして私は1人、裕介たちが走る富士山へと向かった。
誰にも呼ばれてないけど。