第1章 冷たい手【巻島裕介】
「ねぇ。アンタ達、最近変じゃない?」
「えっ?」
1学期の終業式の後、教室でもらった通信簿を眺めながら、ふと陽子に睨まれた。
「な、、、なんのことかなー?」
その目はじっとりと据わって、、、陽子ちゃん、めちゃくちゃ怖いんですけど、、、!
ガタン!!
突然、大きな音を立てて陽子が身を乗り出した。
「とぼけんじゃないわよ!全部分かってるんだから!!何で最近巻島くんと帰らないのよ!」
「えっ!えーと、何のこと、、、?」
裕介からイギリスに行くと聞かされたあの日から、私達は一緒に帰っていなかった。
元々クラスも違うし、帰る時間だって違う私達にそれ以外に共有できる時間なんか無くて。
これまでは用なんてなくてもたまに行っていた裕介の教室にも、あの日お弁当を持ってきてくれた後に廊下で溜息をつく裕介を見てから、私は足を運ばなくなっていたのだ。
そしてそのまま春が終わって、夏がやって来て。
気がつくともうすぐ夏休み。
私はどれくらい裕介の顔を見ていないのだろう、、、。
だけど、
それにしても、、、
何で陽子にバレてるの!?
陽子の前では今まで通りにしてたつもりだったのに!!
焦る私を見て陽子がニヤリと笑った。
「あ、そ?美月がそのつもりならいいわ。金城くんに教えてもらったインターハイの会場、アンタには教えてあげないから」
「え!」
「大体おかしいのよ。去年はインターハイの日程がわかった途端、毎日のようにその話ばっかしてたアンタが、今年はその話題を振ってこないんだから」
「それは、、、」
だって今年は裕介に誘ってもらえなかったから。
「それどころかクラスでその話が出た途端、教室から出て行くし、、、。ったく、どうなってんのよ?今年もまたどーせウルサイんだろうなって覚悟してた私の時間が無駄になったじゃない」
「う、、、」
どーせ?!
たしかに去年は陽子にウザがられていたけれど、、、
その言い方ひどくない?笑