【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第5章 星空だけが、きっと知ってる
「いいかー。不埒と淫らは違うんだからなー・・・ヒック」
呟きはいつのまにか演説の様になり、また、その声の大きさがこちらへ近づいて来ているという事を示していた。
「っ・・・やべェ・・・!ひとまずその木に!」
木に背中をぴったりとくっつけた体勢の私の正面から、先輩が私を覆う様にぴったりと身体をくっつけて来る。
「睦月、悪ぃ、ちょっと我慢な」
一歩間違えれば停学、ひどければ退学になりかねない状況。
なのに私はそれよりも、先輩とほとんど抱き合っているという事実に嬉しさと興奮を禁じ得ないで居た。
せめて深呼吸をと思い息を吸い込むと、ぴったりくっついた先輩の香りと体温。
その胸に顔を埋め、目を閉じているのが精いっぱいだった。
心臓が破裂しそうな程にどきどきしている。
先輩にはもちろん、もしかしたら崖の上にいる諸岡先生にすら聞こえてしまうのではと思う程の鼓動。
動く事が出来ない緊張感の中、「どうか見つかりませんように」と先輩の着ているジャージの腰のあたりをぎゅっと掴む。
ものの一分にも満たない出来事だったけど、この瞬間が永遠かと思うくらいだった。
ううん、この瞬間が永遠だったら良かったのに。