【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第1章 4月に芽吹くヒーロー
彼らに少し遅れて着いたのは、ジュネスの家電売り場。
大きなテレビの前で三人は何やら話し合いをしている様だ。
早紀とこの場所の関連性がわからないまま、睦月は見つからないように物陰から様子を伺う。
辺りを警戒しながら、おもむろに彼らが鞄からロープを取り出し始めた。
小さな身体をさらに縮めて物陰から覗くと、例の転校生と陽介がそれを胴に巻き始めた。
一体何を始める気なんだろう・・・
千枝に何か言葉を掛けるが否や、二人は大型テレビに向かって、まるでプールか何かの様に飛び込む。
画面にぶつかるどころか、テレビの平面は二人を飲み込み水の様に波紋を描いていた。
「嘘・・・!?」
思わず声をあげてしまった。
「え、誰!?」
ロープを握ったままの千枝が振り返る。
「あ、あぁ、ええぇと・・・さ、里中先輩、ですよね・・・?今のは・・・」
「ああああ、これはあのね、あの、ななな何て言うか」
慌てた千枝がぐいとロープを引っ張る。
テレビの中に吸い込まれていった先輩達に繋がっている筈のロープは、あっけなく途切れ、千切れた先がテレビから吐き出されるように弧を描く。
「あーッ!!」
ロープの先を呆然と見つめながら、千枝はその場にへたり込んでしまった。
「嘘・・・どうしよう・・・鳴上君が・・・花村が・・・」
千枝の狼狽ぶりに、ただ事ではないのが感じ取れた。
あのテレビの中に、先輩たちが・・・。
考えるより先に、身体が勝手に動いていた。
テレビの前に立ち、そっと手を伸ばしてみる。
未だ波紋を描いたままの画面が、睦月の掌を受け入れた。
「え、ちょっと!駄目!」
千枝が必死に止めようと身体を掴もうとしてくるより早く、睦月はその身を波紋の中に躍らせていた。