【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第1章 4月に芽吹くヒーロー
言いかけた瞬間、小西酒店の中から大きな音が轟く。
その音に弾かれように睦月はもう一人の自分の肩を掴んでいた。
「あのね!あなたが何だか正直よくわかんないけど、今、先輩が大変なの。今の音、もしかしたら先輩達に何かあったのかもしれないの!」
「ハァ・・・?だから何よ?」
「だから、その・・・、私もあなたも花村先輩の事、好き。ここまで合ってる?」
「だから何なのよ」
「私は先輩を探しに来たの。その先輩が、今ピンチかもしれないの」
肩を掴む力が一層強くなる。
「だから、お願い、もう一人の私。今はとりあえず力を貸して欲しいの。大好きな先輩の事、失いたくないよ・・・!」
叫んだ言葉と同時に、掴んでいた肩がスッと消えてなくなる。
思わず前のめりになってたたらを踏む。
ふと見上げると、それまで自分と同じ姿をしていたものが、宙に浮き、ノイズにまみれながらその形を変えて行く。
「ったく・・・今回は仕方ないわ。だけど忘れないで。アンタが私を真に受け入れない限り、私は何度でもアンタの目の前に現れてやるから。」
毒付いた言葉が頭の中に囁きかけられる。
空中から、ゆっくりと青白い光が下りて来る。
それは、カードの様な物だった。
もう一人の自分の存在をそこに感じ、カードを抱きしめる。
シラヤマ・・・
心に浮かんだその名を口にする。
シラヤマ、私に力を貸してくれてありがとう―
拳を握りしめ、胸にあてる。
さっきまで対峙していた自分の嫌な部分。
不思議と、彼女が力を貸してくれている事が睦月に勇気を与えた。
(先輩。今、行くから・・・)
酒店の入り口に立てかけてあったモップを手に取り睦月は店内へ走り出した。
そのすぐ近くで丸い着ぐるみが息をひそめて一部始終を見ていた事も知らずに。