【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第1章 4月に芽吹くヒーロー
心地よい温もりと規則的な揺れに、睦月は夢心地で先程起こった出来事を反芻する。
あれは・・・花村先輩を助けにコニシ酒店に入る少し前の事。
店内に足を踏み入れようとした瞬間、背後に気配を感じ振り返ると、
そこには自分自身が、いた。
確かに背格好や顔は自分自身ではあるが、どこか歪な、生理的な嫌悪感を醸し出すような表情。
なにより異質なのはその瞳だった。
金色の瞳は爛々としていて、自分の心を全て見透かされるような、思わず背けたくなる冷たい視線。
「なにビビってるの?」
心底馬鹿にしたような声色で、私にそっくりなその人物が話しかけて来る
「な・・・なんで・・・」
「フフッ・・・『何で私が目の前にいるの!?』そう言いたいんでしょ?アハハッ!馬鹿みたい!」
「っ・・・!」
「馬鹿みたい、というよりも、馬鹿ね、アンタ。どうせ大好きな『ハナムラセンパイ』を追いかけてここへ来たんでしょう?」
尚も言葉を止めないもう一人の自分。
その声はノイズ交じりで、酒店の中から聞こえて来る先輩の声と共通する事に気が付いた。
「良かったねぇ、邪魔者が死んじゃって」
「な・・・!」
それが早紀を指している事は明白だった。
「これでアンタの恋路を邪魔する奴は居なくなったね。大好きな人を失っている今がチャンス。優しく励まして、支えるフリをすればセンパイは私のモノ・・・」
ショックだった。
ほんの少しだけ頭の隅によぎった事を指摘された事に。
そして、自分がそんな想いを抱いていたという事実を真っ向から突きつけられた事に。
冷や汗が背中の窪みを伝って行ったが、姿勢を整える事も出来ない。
「ち・・・違う・・・」
「何がよ?ホラ、ちゃんと言ってみなさいよ」
「違う、私は・・・私は・・・」