【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第14章 【短編】Trip To Time
部屋へ戻ると入り口近くのバスルームからうっすらと湯気が立ち上っていた。
湯気・・・と言うとすぐに完二のシャドウが居た熱気立つ大浴場を連想しがちだけど、その時の妙な胸騒ぎとはまた別のソワソワが俺の背中を走り抜ける。
わざとに音を立ててバスルームを通り過ぎるが、そこに睦月の気配はなかった。
「睦月?帰ったぜー」
部屋の中に歩みを進めて行くと、ベッドの上に布団もかぶらずに丸くなってうたた寝をする睦月が目についた。
服装は出かける前と一緒だったが、きちんと乾かしきっていないのだろう、まだ水っ気が残る髪はいつもの一つにまとめたヘアスタイルとは違い、見慣れない睦月の姿に俺はつい視線を泳がせてしまう。
「おーい。睦月サン?風邪引くぞー」
軽い咳払いの後、ペシッと軽く叩いて見ると、眉根を寄せた睦月の目がゆっくりと開かれる。
「んー・・・」
「ほれ、飲みもん買ってきたぜ」
「あー・・・あれ、私寝てました?うわ、冷たっ」
寝起きの睦月の頬にペットボトルを押し付けると、ぎゅっと顔を顰めている。
「そりゃもう。まぁ、あんだけ昼間歩き回ったんだしな」
「うん・・・すっごく楽しかったです」
起き上がった睦月はそのままベッドに腰掛ける。
ペットボトルのスポーツ飲料を一気に身体に流し込みながら睦月は過ぎた今日の特別な時を思い返している。
俺は迎えに配置されたソファに陣取り、同じく飲み物のキャップを開けて余韻に浸か・・・れるはずもなく、頭の中ではいつ「それ」を起こそうかとタイミングを計るばかりだった。