【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第14章 【短編】Trip To Time
約束の当日、俺達は朝早く八十稲羽駅で落ち合った。
犯罪行為をしている訳ではないのに、心の中で誰かに見られてはいないかと妙に緊張感が走る。
それは睦月も同じらしく、せわしなく周囲を見回している。
待ち合わせ場所で俺よりも少し早くに着いたと笑っている睦月はいつもよりも余所行きの出で立ちだった。
「あ、あのさ・・・よく睦月の家、オッケー出してくれたな」
俺の声が上擦っている。
「えっと・・・りせちゃんと遊んでその後そのまま家に泊まりに行くって、嘘ついちゃいました」
「マジか。っても、俺も似たような感じ。」
「ところで、一泊二日って・・・何処に行くんですか?」
少し不安そうに睦月が訪ねる。
驚かせてやろうと思って、行き先は敢えて告げていなかった。
「それは電車に乗ってからのお楽しみ、って事で」
そんな会話をしているうちに駅に電車が着く。そそくさとそれに乗り込み、アナウンスが流れると、見知った景色がどんどん流れて行く。
まるで駆け落ちでもしているような少しの罪悪感と、これから俺達を誰も知らない場所に行くという期待。
それは隣に座る睦月も同じようで、伏し目がちに流れる景色を見つめている。
「睦月、ほれ」
そう言って鞄からデスティニーランドのガイドブックを手渡す。
前日にジュネスのテナントに入っている本屋で調達してきた物だ。
ガイドブックの表紙の文字と俺の顔を交互に見ては頬を紅潮させる睦月。
「え・・・本当ですか!?」
「へへ・・・びっくりした?」
「びっくりしてます。え、どうしよう・・・嬉しい・・・!あ、そういえばクマ君は?行き先知ったらきっと行きたがってませんでした?」
「あぁ、クマには行き先は言ってない。後の事は悠に頼んで来た」
「そっか、それじゃクマ君と鳴上先輩にお土産買って行かないと」
「それと、りせにもな」
「私、行くの初めてなんです。どうしよ、なんか緊張して来た・・・」
「俺は向こうに住んでた頃、友達と何度か行った事あるからまぁまぁ詳しいぜ?」
「うわ、羨ましい!それじゃあ先輩に案内してもらいますね」
「まぁ、着くまでまだまだ時間もあるし、周る目星でもつけて行くか」