【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第14章 【短編】Trip To Time
「はァ!?株式優待!?」
連休を前に突然親父から渡された封筒には無機質な文字でそう書かれていた。
見慣れたジュネスのロゴが印刷されたその封筒の中には【デスティニーランド・ペアでご招待】と印刷されたチケットが入っていた。
俺が動揺している間に、親父は既に俺に背を向け去って行く。
ドアが閉まる瞬間、親指を立てていたが何のサインなのかさっぱり判らない。
そもそも親父が株主優待を受ける程ジュネスの株を持っていたなんて初めて知った。
「ってもコレ・・・どーすんだよ・・・」
ベッドに寝ころび封筒の中身の招待状をひらひらさせてみる。
改めて文字を読んでみると、どうやらこれは一泊だけではあるけど宿泊券も兼ねているらしい。
「ペアチケット・・・ねぇ」
真っ先に睦月の顔が脳裏に浮かぶ。
付き合い始めてから、狭い田舎という事もあってなかなか進展しない睦月との関係に、俺は少し焦れていた。
勿論、自分の行動力の無さも原因の一つではある訳だが。
その時、クローゼットが勢いよく開いたと思うと、中からスナックを齧りながらクマが飛び出して来た。
「ヨースケ、どうしたクマ?」
「な、何でもねぇよ!つかその前にお前、そこで菓子食うなっつってるだろ!」
そう言いながらさり気なくチケットを枕の下に隠す。
・・・クマには悪いが、コイツに見つかると色々面倒だ。
俺は携帯電話からメール画面を起こし、悠へこの件に関しての相談を打ち込むことにした。
やきもきしながらクマと何気ない会話をする事数分、悠からの返事が返って来る。
「了解。こっちの事は俺が上手くやっておくから心配いらない」
シンプルな返事にも関わらず、妙に安心感を覚える。
その気持ちに後押しされて、今度は睦月へお誘いのメールを打ち込むことにした。
途中何度かクマがメール画面を覗こうとしてきたが、冷蔵庫にホームランバーがあるという事と、それを食べてよいから邪魔をするなという条件を出すと、うきうきとクマは部屋を後にし軽快な音を立てて一階へ下りて行った。
(悪いなクマ。上手く行ったらお前に何か土産でも買って来てやるから)
そう心の中で詫び、俺は睦月へのメールに集中する事にした。