【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第13章 The Orange days
ちらりと睦月に視線を戻すと、睦月も俺と同じように遠くの景色へと視線を向けている。
そのまま睦月の唇がゆっくりと動いた。
「・・・はい」
その仕草が俺の心臓の鼓動を一気に高める。
「・・・良かった」
俺が笑顔を向けると睦月も真っ直ぐに俺を見つめ、微笑み返してくれた。
俺のよく知る、大好きな睦月の笑み。
頬を少し紅潮させ、幸せいっぱいというその笑顔は初めて見る浴衣姿の所為か、いつもより魅力的に見える。
その時、夜空に大きな音が響いた。
続いて暗闇を彩る光の大輪。
「わぁ・・・!花火!」
そう言いながら夜空を見つめる睦月の瞳に花火が映る。
続いて空に色とりどりの花火が打ち上げられて行く。
―俺の身体は深く考えるよりも早く、ごく自然にそうしたいと、ただそう感じた―
「睦月・・・」
「なんですか?」
俺の方を向いた睦月に不意打ちの様に唇を重ねる。
瞳を閉じた俺の耳に、花火が打ち上げられる音だけが響く。
そのまま手を伸ばし睦月の小さな両肩を抱くと、林間学校の時のように、俺の服の胴辺りの部分を睦月がぎゅっと掴んで来た。
柔らかな唇の感触。
時折瞼を橙に灯す花火。
辺りに拡がる火薬の匂い。
それだけがこの瞬間、俺の世界の全てだった。