【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第13章 The Orange days
「あー、花村達じゃん」
少し歩いた先に、クマと、クマに持っていかれた女子4人組がヨーヨー釣りに興じている。
首尾よく一番先にヨーヨーを釣り上げ、顔を上げた里中が俺達の姿を見つけ、大きな声で呼び止める。
いつもよりも人が多いとは言え、所詮は神社の周辺。冷静に考えればすれ違わない方がおかしい。
「何してんの?」
「いや、何って。それ聞いちゃいます?里中サン」
「結局皆集まっちゃっちゃいましたね。はい、これ」
二つ釣れたヨーヨーのうち、一つを俺に手渡しながらどこか嬉しそうに笑う睦月。
掌の中で水の重量で不規則にそれが揺れる。
「じゃあ、私は悠先輩に!」
素早くりせが悠の隣をキープしている。
「もうすぐ花火が始まるみたいだけど、どうする?」
佇まいを直した天城が空を指さし問う。
「んじゃ、折角だから見て行きます?先輩ら」
「カンジはクマを肩車するクマー!」
「するかッてんだ!」
話し込んでいるうちに、どんどん通路に花火目当ての人が溢れて来る。
「それじゃあ、俺達も行こうか」
悠の一声で全員が移動を始める。
何となく歩みを遅く、最後を歩いていた俺の隣にさりげなく睦月が並ぶ。
ふと俺達の間をどこかの家族連れが横切り、たちまち仲間達と少しの距離が開く。
誰にも見えないように、そっと睦月の手に触れ、握ってみる。
その手が同じくそっと握り返して来た。
人混みに紛れて密かに手を繋ぐ俺達。
その時、ポケットの中の携帯電話が振動した。
咄嗟に手を離し、画面を見るとメールの着信があった。
送信先には、数メートルも離れていない悠の名前。
「花火が終わったら、落ち合おう」
その一文しか書かれていないメールで悠が何を伝えたいのかがすぐに判った。
少し先を歩く悠の背中が、「こっちは任せろ」そう言っている気がした。
そっと頷き返し、再び睦月の手を握ると、その手を引き人混みから逸れる様に俺は横道に入った。