【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第13章 The Orange days
「なぁ、悠」
完二がふと屋台に立ち寄っている時、並ばない俺と悠は列から少し離れていた。
ふとその時、睦月の事を打ち明けようという気持ちが浮かび上がった。
小声で悠を呼び、その声に気付かれなかったらこの話は止めようという勝手な賭けを心に。
「なに?陽介」
祭りの賑やかな音にかき消されると思っていたその声を悠が聞き取る。
運の悪さを少し悔やみながらも、このきっかけを逃すと悠に打ち明けられないかもしれない。
ふとそんな予感がよぎる。
「あのさ、悠には話しておこうと思ってる事があるんだ。・・・実はこの間から、睦月と付き合う事になった」
「そっか。良かったな、陽介」
「え?」
「どうした?」
不思議そうに首を傾げる悠に、今度は俺が首を傾げ返す。
「あれ?えーっと・・・悠も・・・睦月の事・・・好きなんじゃなかったっけ」
「え、俺そんな事言った?」
混乱する俺の頭上に、はてなマークと星マークがぐるぐるする。
「や、だってほら、林間学校の辺りに、あいつの事可愛いとか健気だとかそんな様な事言ってなかったっけ」
「あぁ。言った気がする。だけど、そういう好きのつもりで言った訳じゃなかったんだけど・・・」
「へ?」
思わず拍子抜けする。
そう言えば河原で殴り合った時も、確かに俺は自分の葛藤を悠に打ち明けたけれど睦月の名前は出していなかった事に気がついた。
「もしかして陽介、俺に気を遣ってた?」
「正直な。それと、お前がライバルだったら勝ち目無いと思ってた」
「そんな事ない。陽介は俺にない物を沢山持ってるよ」
お世辞の混じっていない真っ直ぐな悠の言葉に胸が熱くなる。
「ま、まぁとにかくそういう事だから。一応、まだ他の奴には黙っててくれないか?」
「勿論だ」
その時、少し離れた所から完二の声が聞こえて来た。
「先輩達お待たせしましたー・・・ってアレ?どうしたんスか?」
手に持ったイカ焼きを頬張りながらやって来る完二。
俺と悠を交互に見ながら完二もまた不思議そうに首を傾げていた。