【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第13章 The Orange days
神社の境内に何とは無しに佇んでいると、堂島さんがやってきて菜々子ちゃんを連れて祭り会場へ歩いて行った。
二人の後姿を満足そうに見送る悠。
その姿は既に名実ともに「菜々子ちゃんのお兄ちゃん」そのものだった。
だけどその後が問題だった。
折角の夏祭り、浴衣姿の睦月と一緒に見て回るどころか、ゆっくりその姿を拝む間も無く先程のクマの宣言通りに女子4人組がクマと共に、俺と悠、完二を背に去って行ってしまう。
「ったく・・・クマの奴・・・」
あのりせをも乗せる程のクマの口達者振りに、誰一人として予測も太刀打ちもできなかった俺達はただ呆然と立ち尽くす。
「俺達、何しに来たんスかね・・・」
「あぁ・・・完二の言う通りだ・・・」
珍しく悠がはっきりと残念そうな顔を浮かべている。
「ここに居ても仕方無ぇ。俺達だけで回るか?」
背を預けていた神社の境内から身体を離し、虚しい提案をしてみる。
「そうだな、陽介・・・」
「まぁ・・・先輩らがそれで良いんなら」
のろのろと行進を始めた俺達。
カップルがすれ違い、つい目でそれを追う。
(はぁ・・・。今頃睦月ともああやって手とか繋いだりしてデート出来たかもしんねーのに)
心の中で密かにカップルに嫉妬心を燃やしながら悠達と並んで歩く。
祭りと言っても、神社とその周囲にいくつか屋台がある小さな規模の祭り。
歴史の深いらしいこの神社は今、どうやら隣町あたりからも人が来ているらしい。
明らかにいつもより人口密度の濃い八十稲羽。
それでも俺の知る祭りとは規模も密度も比べ物にはならないが、暗闇に包まれた神社だけが煌々と提灯で照らされる様はまるで古い映画のような情景だった。