【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第1章 4月に芽吹くヒーロー
そこへ、ピコピコと聞きなれない音が規則的にこちらへ近づいてきた。
先程の化け物を思い出し、身構える睦月。
しかしその不安とは裏腹に、丸みを帯びた着ぐるみの様な物がこちらへ歩いてきた。
「センセイ、ヨースケ、無事クマ・・・?」
緊張感の無いその存在は何かのマスコットなのだろうか。
人が入るには随分背の低い着ぐるみだし、そもそもこんな所に・・・?
今度は本当に睦月の頭が混乱し始めた。
「おい、クマ!今ちょっとすっこんでろ!事態がややこしくなる」
「あ。花村、この子、気絶した・・・」
「ホラ見ろ!ったく・・・。クマも無事か?」
「クマはずっと隠れていたから平気クマ。それよりそのコ、さっきクマとすれ違ったクマよ」
「何で止めねーんだよ!」
「クマが声を掛ける間も無く走ってったのよ~。それにしてもこのコ、さっき入り口ですごかったクマよ」
「花村、クマ、話は後にしよう。とりあえずこの場を離れないと」
「あぁ、そうだな。・・・この子、俺がおぶっていくよ」
「花村、平気か?」
「いや、正直今立ってるのもしんどい。けど、この子は、俺の心を救ってくれた」
「あぁ、そうだな。でも、無理をするな。俺が背負っていくよ」
「・・・悪いな、鳴上、頼んだ。なんか俺、ちょっと情けないかも」
「そんな事、ない。 覚醒したばかりなのにいきなりペルソナの力を使って人ひとり回復したんだ、消耗して無理はないさ」
そう言いながら睦月を背に担ぐ鳴上。
担ぐ際に学ランを脱ぎ、彼女の身体ごと腰に巻き付けていたのは、スカートの中が見えないようにと彼なりのさり気ない気遣いだった。