【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第1章 4月に芽吹くヒーロー
引っ越しの荷ほどきも終わり、この地に慣れ親しんでおこうとその日陽介は商店街や住宅地をぶらぶらと歩いていた。
日も傾き始め、少し肌寒く感じたのでそろそろ帰ろうかと思案していた時だった。
住宅地の細い路地から、何やら人の声がする。
声の調子からして、どうやら何かのトラブルのようだ。
好奇心から思わず立ち止まり、陽介は進行方向を変えてそちらへ歩みを進めた。
「だから、止めてください・・・!」
「写真撮るくらいいいだろ?どうせ見られたくてそんな恰好してるんだから」
「違います・・・もう帰りたいです」
「うるさいな。いいからポーズ取れよ。あんまり俺に逆らうならお前の事、ネットに晒してやってもいいんだぞ?」
路地裏の塀を背に小柄な女の子が一人の少年に迫られている所だった。
陽介よりも年下だろうか。
吊りベルトを下げた黒いホットパンツに長袖ながらも薄手のカットソーという出で立ちの少女は、今にも泣きだしそうな声で必死に止めて欲しいと訴えている。
少年の方は、陽介とほぼ同じくらいだろう。
淀んだ眼に、だらしなく着こんだ部屋着。
その手にはカメラが握られている。
委縮する少女の態度に気を大きくしているのか、必要以上に威嚇の意を示し、少女に撮影とポーズを強要していた。
「おい、何してんだ?」
少し牽制するような声で、陽介は後ろから声を掛けた。
「な・・・何だよお前、あっち行けよ!!」
さっきまでの態度とは一転、挙動不審になる少年。
この様子なら暴力沙汰にはならないだろうと少し安堵しながらも、態度を崩さずに陽介は続けた。
「この子嫌がってんだろ?止めてやれよ」
「なんだよ、関係ないだろ。コイツの彼氏か何かなのか?」
「だったらどーする?」
腕を組んで少年を見据える陽介。