【ペルソナ4】 Shining one Day by day
第7章 ノイズの交差点
「ほら、もう全部あきらめちゃいなさい」
私のシャドウが顔を歪めながら笑みを浮かべている。
その手を取りかけた時、首元から小さな音がして、指輪を通したネックレスが服から飛び出て来た。
これは・・・
祈るように両手でそれを胸の前で包み込む。
何故かほんのりと温かい。
「睦月、これ、お前にやるよ」
この指輪を貰った時の記憶が蘇る。
続いて、初めて出会った時の事や一緒に笑い合った出来事達が大波の様に私の頭に押し寄せて来た。
「・・・だめ」
「何がよ?」
焦れたように私のシャドウが聞き返す。
「私、あなたとはまだ行かない。皆の所に戻らなくちゃ」
「目を覚ました時、絶望するかもよ?」
「例えそうだとしても、私は戻りたいの」
「チッ・・・」
「ごめんね。私はまだあなたと向き合えていない。だけど、力を貸してくれてありがとう。今まで皆を守れて来られたのも、皆と一緒に居られたのも、あなたのおかげだよ」
「・・・あんたにはウンザリよ」
「そうだね、これはウンザリされても仕方ないね。ねぇ、あなたはどこに行くの?」
「あんたに教える理由はないわ」
「そっか。私、あなたには消えて欲しくない。だから、自分の事を認められるように頑張るから。だから、もし出来たらまだ傍に居て力を貸して欲しい」
「まぁ、気が向けばだけど。それにしても随分身勝手ね」
「ありがとう!」
反射的に私は自分自身のシャドウを抱きしめていた。
「フン、でも、忘れないで。私はいつだってあんたの事を狙ってるんだから。油断してたら、その首・・・私が切り落とすかもよ」
「あなたにそんな事させないように頑張る」
「折角楽にしてやろうと思ったのに。・・・ホラ、大好きなあの人が呼んでるわ。さっさと行けば?」
そう言い残してシャドウは一瞬光ったかと思うと姿を消してしまった。
私は・・・もう一人の自分を苦しめてしまったんだ。
ごめんね。私の勇気が足りないせいで。
だけどね、あなたの事を思うと、少しだけ強くなれる気がするよ。